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2024.5.27

「リプライズ・スコア」後書き


リプライズ・スコアは、元はX(旧Twitter)のワンライ企画用として生まれたお話でした。
お題「楽器」に対して最初に浮かんだものがピアノで、彼のあの長い腕に大きな手は大層活きるし素敵なんだろうなぁ、なかなか縁遠そうな楽器だけど・・・でも幣妓夫太郎は夢主の為なら基本的に何でもするからな・・・から、こじ付けの様な形で出来上がった主軸が「3部とは異なるif世界線で、記憶の無い夢主に一歩でも近付く為に死に物狂いでピアノを始める妓夫太郎」でした。

何と言っても原作イメージとはかなりかけ離れているし諸々不安要素はあるものの、まぁifだし私が素敵だと思った直感を信じて良いだろう、ワンライのお題で少し連載出来たらそれで満足、とお題に沿う形で細々続け、気付けば一旦の完結まで12話。そこからはワンライに拘らずちょこちょこ番外を書くなどしている内に、自分の中でも徐々に愛着が増していきました。

現代って楽しい。誰にも脅かされない、虐げられない、何と言っても平和。生きていた頃や鬼だった頃の不安事はぐっと減りますし、だから私は続軸を書くのがとても好きです。ただ、高校生だと・・・出来ることに、限界が・・・!キラキラした青春は書けても、大人なことはさせられない・・・!という個人的倫理感とオタクとしての下心が拮抗しているところに、音大生という設定は実に都合の良い「現代軸で少し大人な関係を書ける」という下地となりました。その割にジリジリしてばかりで大人なことはほぼ無かったという。笑。(折角なんだからお酒の話くらいはmore afterとかで書けるかな、どうかな!)

何を置いても梅ちゃんファースト、自分のことは二の次三の次、その精神が染み付いた幣妓夫太郎は自ら多くを望むことを諦め、恐れてすらいました。最初の12話に至るまで、何度も「欲を欠くな」「余計なことを望むな」「必要以上を願えば大事な何かを取り零す」と自身を戒めていたのは、彼の痛ましい本質・そして本編一部にて幸福の絶頂から一晩で奈落の底へ突き落とされたことへのトラウマの様なものでもありました。ただ、自分で設定しておきながら私としてはそこのところがモヤモヤでもあり、妓夫太郎だって梅ちゃんと同じくらい大切にされて良いし、多くを望んで良いし、諦めたくないことは諦めなくて良い筈で・・・そこを自分の中で整理した結果、「記憶が無くてもふたりはちゃんと結ばれたし、もうそれだけで十分に幸せだから夢主側の記憶が無いことはとうに諦めがついている」妓夫太郎に対し、根底を覆す出来事を贈って二度目の幕にしようと思い至りました。

夢主が遠ざかるかもしれない恐怖に、多くを望み過ぎた罰だと諦めることなど出来ない。昔のままの状態でもう一度向かい合えた今、余計な記憶などいらないとは言えない。ただ、笑って欲しい。これからも隣にいたい。あの頃叶わなかった続きを、一緒に生きたい。そして、目的達成の手段でしかなかったピアノを、自由を提示されて尚自分の意思で選ぶ。この時間軸で私が彼に贈れる精一杯を詰め込みました。指先にキスは第一話では今だけだという戒めでしたが、最終話で未来に繋がる形で再現できたことで、自己満ながらやりきった感でしばらく燃え尽きました。

余談ですが幸太郎について。拙作一部から読んで下さっている方にしかわからないオリキャラの彼は、夢主が記憶を取り戻す以上はどうしても必要な存在でした。四人でもう一度会うことが幸太郎の願い、そして梅ちゃんの願い。ここから先は続軸で今後扱う予定ではありますが、四人揃うことが彼らの未来にとって一番優しい形です。音大ifの時間軸にはこれまで出て来なかったため無理くり感はありましたが、拙作においては欠かせない存在である為の登場でした。この時間軸でもきっと梅ちゃんに振り回されながらニコニコしてる内に収まるべきところに収まるのでしょう。私の中ではもうひとりの夢主のような存在です。

ハッピーエンドが好きです。妓夫太郎に笑って欲しくて書き始めた長編の、if世界線ではありますが、また新たな話を整えられて今はほっとしていると共に、今持っている続軸、高校生達の話にそろそろ戻ろうと心をシフトさせています。あ。Xではお伝えしたのですが今回の完結で妓夫太郎夢200本達成でした^^(プライベッターの年齢制限夢含む)どこまで伸ばせるかわかりませんが、これからも楽しく夢活続けていきたいです。